『Number』に柳澤健の新連載『2000年の桜庭和志』がスタート。
『Number』×柳澤といえば『1984年のUWF』が記憶に新しいところだが、自分にとって前田日明は格闘技ファンを始める前の「歴史の中の出来事」だったのに対し、PRIDEの桜庭は(ホイス戦以降だが)リアルタイムでその戦いを見続けてきた存在。こういうテーマのノンフィクションが出てくることに「自分も歳をとったな」という変な感慨を抱く一方、この連載の中で自分が知っている何が描かれ、知らなかった何が描かれるのかに今からハラハラしてしまう。
『1984年~』は「前田中心のUWF史観」といういわば「通史」を打ち破ったことが大きな衝撃を呼んだわけだが、「初期リングスはワークの試合が含まれていた」という事実を関係者の証言の積み上げで描いてみせた点が個人的にはものすごい驚きだった。
PRIDEの歴史を振り返れば、桜庭絡みではないものの「疑念」を招く試合は散見されたし、ワークの話を抜きにしても粗い階級設定、トップ選手の過密スケジュール、ドーピング検査の体制はどれだけ敷かれていたのか…など、競技の観点からするとグレーゾーンというか首をかしげる点は多々あった。(当時の自分がそこに目をつぶって熱狂していた、というのもまた事実なのだが。)
桜庭を通じてPRIDEの歴史を描くとすればこれらの暗部、それこそPRIDE消滅につながった反社会勢力とのつながりにも触れておかしくないわけで、果たして関係者の口はどこまで軽くなっているのか、柳澤健のペンはどこまで切り込めるのか…というのを想像すると、期待したいような見るのが怖いような、なんとも言えない気持ちになってくる。
連載第1話は昨年のUFC殿堂入り表彰式の様子から始まり、まずは無難なスタート。2000年代前半に日本を熱狂させた世界最高峰のリングは、10年強の時を経てどのように描き出されるのか。『Number』発売日にソワソワする状態がしばらく続きそう。