反り立つ壁に撃沈。


by nugueira
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マクレガー逮捕。秩序破壊者の、あまりにお粗末な到達点。

 UFC223の会場で、コナー・マクレガーが取り巻きとともに選手の乗っているバスを襲撃。騒ぎに荷担したロボフを含め3試合がキャンセルされ、マクレガーは逮捕されることに。
 想像の範疇を遥かに超える事件で、第一報を見た時は理解が追いつかずただ唖然とするしかなかった。MMAで最も知名度が高い選手がこのような事件を起こすことで、競技自体への信頼度も大きく損なわれる。負傷した選手、数試合を失ったこの興業というレベルにとどまらず、今回の騒動がMMAに与えるダメージは計り知れない。

 メイウェザー戦で基本給だけでも30億円以上のファイトマネーを手にしたマクレガーにとって、その10分の1も稼げないUFCに戻るモチベーションはないだろう、というのは予想できた展開。ダナが繰り返していた「年内に試合をする」発言には現実味が感じられず、このままフェードアウトするのだろう…と思っていたのだが、事態はそれどころではない最悪の結末を迎えてしまった。

 振り返れば、マクレガーはUFCの従来の価値体系をぶち壊すことで存在感を大きくし続けてきた。勝ち続けることで徐々に上位ランカーとの対戦が組まれ、その先にタイトルマッチが待っている、という王者を頂点にした厳格なピラミッド構造が敷かれていたUFCにあって、トラッシュトークとファンの絶大な支持を武器に飛び級を続けるマクレガーは旧来のファンからすると異質な存在だった。
 だがそんな「良識派」のファンすら、結果を出し続けるマクレガーを認めざるを得なくなってくる。絶対王者アルドを秒殺KO、アルバレスをボクシング技術で圧倒し同時2階級制覇。更にはボクシングの無敗王者メイウェザーを引きずり出してのボクシングマッチ、という漫画の世界でしか起こりえなかったようなドリームマッチを実現させてしまう。その過程でファイトマネーも急上昇し、MMAのビジネス規模を新たな次元へと引き上げていった。

 だがマクレガーの存在は弊害も大きく、他階級でも高額ファイトマネーを狙うビッグマッチ路線を意識する選手が増え、「世界の頂点」というUFCの根幹である価値観が徐々に揺らいでくる。当のマクレガーはUFCでは1年半近く試合をすることがなくライト級戦線を停滞させ続け(これは王座剥奪の判断を下さなかった団体側の責任もあるが)、そして今回の事件へ。
 アルド戦、アルバレス戦のマクレガーは好き嫌いを超越して、観る者の度胆を抜く素晴らしい選手だった。金銭的に満ち足りた彼が、もう戦う意欲を見いだせなくなったことも理解できる。だが、行き場をなくした衝動をケージ外で他人にぶつけることは許されず、弁解のしようもない。
 常識をぶち壊すことで巨額のマネーを生み出してきた秩序破壊者は、最後にバスとともに自らのキャリアと栄光も破壊してしまった。

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by nugueira | 2018-04-06 23:08 | UFC | Comments(0)