アリスター・オーフレイム、落ちた虚像
2012年 04月 24日
この件について腹立たしい一方で後ろめたさも感じるのは、アリスターのドーピングってある意味では団体・ファンも巻き込んだ「共犯関係」の上に成り立っていたんじゃないのか、という点に改めて気づかされたから。
多少の失礼を承知で書かせてもらうと、今回アリスターに対してファンが怒っているのは「ドーピングなんかしやがって、この野郎!」というより、「なんでこのタイミングで引っかかってるんだよ!やるなら最後までごまかし続けろよ!」という意味合いが多分にあるんじゃないか、という気がする。
個人的にアリスターへの嫌悪感がピークだったのは09年のK-1でアーツをボコボコにした時で、「どう見たってドーピングなんだから、ちゃんと検査して追い出さなきゃ駄目だよ!K-1ヌルいよ!」と思った。
が、翌年ストライクフォースで試合をするに至って「あれ、北米で試合できたの?じゃあドーピング検査はシロだったの?」となって振り上げた拳を下ろす場所がなくなってしまい、疑惑はうやむやなままアリスターのKO劇を単純に「面白い」と思うようになって現在に至る…という感じである。
よく考えればここまで「状況証拠」の揃ってる選手をタイトル戦線に絡めるのは団体側にとってもリスクが大きいはずだが(現にUFCが今そのツケを支払ってるんだけど)、団体側もアリスターの商品価値に抗いきれず起用し続ける。そしてファンの側も内心「本当は使ってるんでしょ?」とニヤニヤしつつ、あるいは疑惑から目をそらして見ないふりをしつつ、アリスターの分かりやすい試合内容を楽しみ続ける。
アリスターの行為は当然「論外」なのだが、今までその論外を「暗黙の了解」として成立させてしまっていたという点で、団体・ファンも共犯関係だった、というのは言い過ぎではないだろうと思う。
公聴会の結果がどうなるか現時点ではよく分からず、ゴン格の記事を見ても「医療行為であることを証明してライセンス再発行」という展開もなくはないらしい。とはいえ、ライセンスの再発行を持ってアリスターと団体・ファンの関係が正常化するかといったら、そうはならない気がする。
UFCは大会1ヶ月前でメインカードが変更になるという損害を被り、カードの再編成に追われる羽目になった。抜き打ち検査でライセンス取り消しのリスクを抱え続ける選手を、タイトルマッチに起用し続ける愚はもう犯せないだろう。
もう一方の「共犯」であったファンも、今回の騒動で薬まみれの選手に振り回されるバカバカしさに気づかされてしまった。度肝を抜かれるようなKO劇も、コミッションの検査一発で消え去ってしまう「虚像」だと知らされてしまった今、アリスターの試合にこれまでのようなワクワク感を覚えることができるだろうか。公聴会の結論がどうなるにせよ、関係者もファンも既に目を覚ましてしまったのだ。
アリスターがK-1でアーツを下したとき、このブログで「リアル・ジャック・ハンマー」という表現を使ったことがある。だが、「勝利のために明日を捨てる」というフレーズが美学として通じるのは漫画の世界でしかない。アリスターは明日を捨てるより前に、あまりにも多くの大事なものを失ってしまった。
さすがにハントの抜擢はなかった。人気ブログランキングへ
ただ、アリスターはルールに則って復帰して仮にチャンピオンになったとしても、嫌悪感しかないなぁ、と現時点では思ってしまいます。全く乗れない。これは、今回の検査が実は白だったとしても拭えないです。管理人さんの言う通り正常化は無理ですね。
おそらく、今後も試合は続けると思いますが、格闘家としては死んだのかなぁ。魅力的な選手だっただけに残念です。
結局9か月の出場停止になりましたが、あの体を維持できるのか、という点も含めて復帰後の先行きは厳しいでしょうね。
しかし今回失望したのはその「最先端」では無かった事ですね。
前回のオランダ一時帰国は怪しかったけど、アリスター陣営は何らかの勝算があって、あのステロイドボディを維持していたのでは無く、常に検査を怯えながらの硝子細工の様なプランだったんだと。
アリスターは2回の抜き打ち検査がある事を知っていて、まさかこのタイミングで引っかかるとは思わなかった。
結局、いつかは転落することに薄々気付きながらのチキンゲームでしかなかったということですかね。下手にタイトルマッチに勝ってから発覚という事態にならなかっただけ、まだ良かったのかもしれません。