反り立つ壁に撃沈。


by nugueira

長谷川3階級制覇。ボクシングの神は、確かに存在した。

 WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、ウーゴ・ルイスvs長谷川穂積のフルラウンドを遅ればせながら見ての感想を。

 長谷川は上体を小刻みに動かしジャブからボディストレート。バッティングでルイスが出血し長谷川が減点されるが、ラウンド終盤に長谷川の左フックが入る。
 2R、ルイスが長谷川の入り際に左を合わせようとするが、長谷川はボディストレート。さらに左フックがルイスの顔面を浅く捉える。3Rからルイスは強い右のパンチを増やし、長谷川は序盤ほど左が入らなくなる。それでもルイスのパンチは回避し余計な被弾はせず前半戦を終了。ジャッジは2名がルイスを支持。
 5R、圧力を強めたルイスの右がヒット。ルイスはさらにロープ際へ詰めて打ち合いに持ち込もうとするが、長谷川は落ち着いてスウェーでかわすと左フックをヒット。さらにワンツーを繰り返しヒットさせ、ルイスに傾きかけた流れを引き戻す。6Rも長谷川はルイスの右をかわすと、終了間際に左を叩きこみ、スピードで圧倒し始める。長谷川は7Rにバッティングで流血しつつも、なおも圧力を強めるルイスを落ち着いて捌きながら左を入れ続ける。8R終了時の公開採点では2者が長谷川を支持し形勢逆転。
 迎えた9R、ルイスの左アッパーがヒット!たたらを踏む長谷川をルイスはロープ際に詰めると、さらに左右の猛打!しかし長谷川は上体をスウェーしながら左右のフックを入れ返し、逆にルイスを下がらせる!勝負所で押し返されたルイスは鼻の怪我がひどくなったのか10ラウンド開始前に立ち上がれず、長谷川が悲願の3階級制覇を達成。

 勝った途端の掌返しは格好悪いので正直に書くが、自分の中では長谷川の歴史は2年半前のマルチネス戦で終わっていたし、今回のタイトルマッチ前には不安以外の要素を見出すことができなかった(こちらの記事)。それがふたを開けてみれば、おそらく大半の人間が予想していなかったはずの王座返り咲き。仮に自分が漫画の原作者か映画の脚本家だったとしても、こんな結末を用意できただろうか?ボクシングの神が確かに存在することを、この試合で確信させられた。

 もちろん、今回の勝利を「神のいたずら」の一言で片づけるのは長谷川に対して失礼になる。ルイスが精彩を欠き、攻めに迫力がなかったとはいえ、序盤から相手の強打を避け、不要な打ち合いにいかなかった長谷川のディフェンス勘とクレバーさは見事だった。ジョニゴン戦・マルチネス戦の敗北ではリスクのある選択が玉砕という結果につながってしまったが、その敗北を糧にここ数年では断トツのパフォーマンスを見せてくれた。
 さらに大ピンチと思えた9Rの打ち合いでは、しっかり相手を見ながら効果的なパンチを叩き込んでの形勢逆転。この場面は長谷川のキャリア全体で見ても、ウィラポンをKOした瞬間に次ぐ名シーンではないだろうか。

 とはいえ、ベルトを手にしたからといって長谷川に蓄積されたダメージが消えてなくなるわけではなく、安全面を危惧するコメントを発し続けてきた身としては現役続行の選択を「結果オーライ」で済ませるわけにもいかない。長谷川陣営も勝敗にかかわらず次戦がラストファイトとなることを示唆しているようだが、今度こそ王者の引き際にふさわしい、勇気ある決断を下してほしい。

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Commented by みゆパパ at 2016-09-21 09:51 x
スカチャンでの視聴でしたので、控え室の映像から流れていましたが、ルイスは笑顔もあり仕上がりに不安を残している感じではなかったので、調子が悪く精彩を欠いていたというわけではなさそうです。長谷川が攻めさせなかったと見るのが妥当かと思います。

これまでのダメージを感じさせることもなく、
試合後の勝利者インタビューでも呂律もしっかりしており、
この試合だけを観ていれば、とても引退してほしい選手とは見えませんでしたね。

今回の勝利の喜びを忘れることなんて到底できないでしょうから、少なくとも次戦はあると思っています。
そうなったら応援するのみです。
Commented by nugueira at 2016-10-02 10:50
>みゆパパ様
 パンチドランカーの症状って回復するものなんですかね…という辺りがよく分かっておらず、未だに不安です。陣営がいうとおり勝っても負けても次戦がファイナル、というのが妥当かと。
by nugueira | 2016-09-21 00:11 | ボクシング | Comments(2)