男祭りプレビュー③ 史上最大の「All or Nothing」。絶対王者は全てを失うのか?
2005年 12月 11日
ヴァンダレイ・シウバVSヒカルド・アローナ
試合の見所:
選手にとっては傍迷惑な意見だろうが、格闘技の名勝負を生む要素のひとつに「どちらが負けても、負けた方が全てを失う」というシチュエーションの存在を挙げることができる、と思う。
「勝った奴が正しい」のが格闘技の大原則だが、負けた選手が評価を落とさない(場合によっては上げてしまう)ケースが多いのもまた事実。それでもやはり、ファンは「勝者総取りの陰で全てを失う敗者」という残酷な構図にカタルシスを覚えてしまう。
8月のGP準決勝でシウバが敗れた時点で、多くのファンが予想していた再戦が早くも実現。とはいえ、負けた側が何の代償も払わずに雪辱の機会を得るなんていうバカな話はない。リベンジマッチにはこれまた大方の予想どおり、シウバのもつミドル級のベルトが懸けられることになった。
昨年大晦日のハント戦は黒星にカウントしてしまうのが可哀想な状況だったが、今回は同階級の相手にほとんど何もできず完敗。シウバの「絶対王者」の肩書きは事実上崩壊したと言っていい。もし再びシウバが敗れれば、事態は単にベルトを失うだけでは済まない。懐疑的なファンが以前から抱いていた「フィジカルが強くて寝技の巧い選手ならシウバに勝てる」という疑念が完全に証明されることになる。酷な表現を使えば、穴がはっきりした瞬間に「絶対王者」は「ただの外人選手」。2連敗の瞬間、シウバはこれまで積み上げてきたもの全てを失う。
一方、挑戦者のアローナは気楽な状況かといえばそうでもない。PRIDE参戦以来、着実に白星を重ね今年のGPでは準優勝。実力は誰もが認めるところだが、手堅すぎる試合内容のため「地味な強豪」のイメージを脱しきれていない。GPで桜庭・シウバを連破しても「ニューヒーロー」ではなく「ヒール」として扱われたのは、この辺りが原因だろう。PRIDEにおいて確固たるポジションを築くには至っていないアローナにとって、「シウバの首を取った」という事実はある意味たった一つの生命線ともいえる。
今回のリベンジマッチで敗れた場合、記録の上では1勝1敗でもファンにとっては「シウバが勝ってめでたしめでたし」で片付けられてしまうのは目に見えている。勝てば「王者」というこれ以上ない見返り。リベンジを許せば「シウバに勝った男」の名誉は帳消し。アローナもまた、この試合の勝敗に全てがかかっている。
断言するが、大晦日に行われる20数試合の中で、勝敗のもつ重みが一番大きいのがこのカードだ。小川VS吉田も、五味VSマッハも、キッドVS須藤も、展開次第では敗者も「敗れてなおアッパレ」となる要素を含んでいる。この試合には、そんな生易しい結末は待っていない。PRIDE史上最大の「Winner takes all」が始まろうとしている。
展開予想:
前回の対戦時はトーナメントということもあってか必要以上に受けに回ってしまったシウバ。同じ轍を踏まないためにも、今回は積極的に仕掛けていくのではないか。アローナがシウバの圧力に屈するか、あるいは余計スキが大きくなったところを前回同様グラウンド地獄に持ち込むか。どっちの展開もありえそう。
ただ、今回の試合はワンマッチのため3ラウンド制。終盤失速気味になることがあるアローナに比べて、シウバのスタミナは驚異的(というか、意外に相手の様子を見てペース配分をしている)。序盤は打撃をかいくぐったアローナにテイクダウンを許すこともあろうが、それを凌いで長丁場に持ち込めば・・・。
接戦になるとは思うが、「絶対王者・劇的リベンジに成功」という感動のフィナーレを、期待込みで予想しておく。
まだ先は長い。人気blogランキングへ
個人的には内容結果含めてすごい楽しみです。予想はアローナですがシウバが一度負けた相手にどう立ち向かっていくかが気になるところです。
>ヒデ様
アローナが勝った瞬間、場内に「なんで年越しにこんな場面を見せられる羽目に・・・」という空気が広がりそうですよね。それはそれでPRIDEの魅力としてアリなんですが。
>もろこしキッズ 様
確かにリターンマッチは前回勝っている方が有利なんですよね。ただ、シウバはハント戦とかを見ても精神面の強さが並ではないので、この状況もひっくり返してくれるのでは・・・と期待しています。
> gaucho 様
ミドル級の「ねじれ構造」はシウバがベルトを持っている限り解決できない、というのは確かなんですよね。今回アローナが勝てばショーグンが取り返しに行くでしょうから、そうなれば白黒つけられますが。
ショーグンは大晦日出てほしいですね。芸人の試合入れた煽りで外されるんじゃファンとしては納得いかないです。