反り立つ壁に撃沈。


by nugueira

井上2階級制覇。「怪物」が「怪物」たる所以。

 ボクシングトリプル世界戦の感想を。いや凄かった。

ミドル級10回戦 村田諒太○-×ジェシー・ニックロウ(判定)
 1Rから村田はボディストレートを起点に攻勢。対するニックロウは攻めが単発で、1R終了時点で村田に危険な要素は皆無。焦点はKOできるかどうかに移ってくる。
 2R以降も村田は左のジャブから右フック、ボディとアッパーも混ぜてのコンビネーションで攻め込んでいくが、ガードをがっちり固めたニックロウをなかなか崩せないままラウンドが経過。ニックロウも有効な反撃の手立てがあるわけでもなく、結局三者フルマークの判定で村田が完勝。
 村田はフットワークを使って中間距離での連打を出したり、スタイルの幅の広がりは見せた形。とはいえお手頃感のある相手なのできっちりKOしてほしかったところ。陣営が試合前から口にし始めた来年の世界挑戦は明らかに時期尚早だと思うのだが。ビジネス的にこれ以上引っ張れないということなのだろうか。

WBC世界ライトフライ級王座決定戦 ペドロ・ゲバラ○-×八重樫東(7R KO)
 ゲバラは左のダブル・トリプルを出し続け、距離が詰まってくると右のカウンター。八重樫も動きは悪くなく、2Rに入ると飛び込みながらの左が入るようになる。しかしゲバラも左の手数は減ることなく、手数でゲバラ、有効打で八重樫という印象。4R終了時の個人的採点は38-38。オープンスコアリングは一人が同点、残り二人が八重樫・・・と思いきや場内アナウンスが間違っており、実際はゲバラがリード。いくらなんでもひどい不手際。
 5Rは近距離での打ち合いの場面が増え、八重樫にとっては得意な展開になってきた印象。だが続く6R、ゲバラの右の連打をまともに食らってしまい八重樫が後退。八重樫は反撃に転じようとはするが自分の距離を作れず、流れが一気にゲバラへと傾いていく。
 落ち着いて立て直したい八重樫だが、7Rに入ってもゲバラの攻勢は続き、八重樫は真正面でまともにパンチをもらってしまう。そしてラウンド終盤、ゲバラの左ボディフックがヒットすると、八重樫は崩れ落ちるようにダウン。そのまま立ち上がれないまま10カウントを聞き、3階級制覇は幻と消えた。
 前半戦は微妙なラウンドは多かったものの八重樫の動き自体は悪くなかったはずなのだが、6Rに連打を食らってから一気に失速。ゲバラが強かったのも確かだが、KO負けからショートスパンでの再起戦、階級を落としての世界戦と、やはりコンディション面での悪条件が悪い結果に結びついてしまったか。試合前に解説の香川照之が「八重樫はロマゴン戦で勝利以外の全てを手にした。今回は勝利だけを手にしてほしい」とコメントしていたが、今の八重樫に一番必要だったはずの勝利は手の届かないところへいってしまった。

WBC世界ライト級王座決定戦 ホルヘ・リナレス○-×ハビエル・プリエト(4R KO)
 開始と同時に重いボディを打っていくプリエトに、リナレスは鋭いジャブで応戦。両者手数は少なめの静かな展開だが、やはりリナレスのスピードが圧倒的。2Rに左フックを突き刺して場内を沸かせると、迎えた4R、距離が詰まったところで連打から打ちおろしの右がクリーンヒット。文字通りの目にもとまらぬ一撃でプリエトをKOしたリナレスが念願の3階級制覇を達成。
 要所要所での勝ち運に恵まれず、ライト級では連敗にはまりこんだ時期もあったリナレスだが、そこで腐ることなく勝てるスタイルを磨き上げ、文句なしの内容での戴冠。本人が試合後にぶち上げた他団体との統一戦を含め、次の試合を早く見たい。

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ オマール・ナルバエス×-○井上尚弥(2R KO)
 開始と同時に積極的に打ってでていく井上。ロープ際で右のダブルを打ち込むと、ナルバエスがいきなりダウン。さらにフックがテンプルをかするようにヒットし、あっという間に2度目のダウンを奪ってしまう。予想外の攻勢に場内大興奮となるが、このラウンドはナルバエスがなんとか逃げ切って終了。
 2Rに入っても井上の勢いは止まらず、ストレートでナルバエスを下がらせると、突っ込んできたところにカウンターの左フックを入れて3度目のダウン。最後はロープ際でワンツーから左ボディをグサリと突き刺すと、一拍の間を置いてからナルバエスがうずくまるようにダウン。王者に立ち上がる余力は残っておらず、井上が圧巻というしかない内容で世界最短での2階級制覇を達成した。

 自分は戦前の予想で「『井上不利』を示すデータはいわば『常識論』から出てくるもの。そういう外野の常識論を軽々と打ち破ってしまうのがスーパースター、あるいは怪物と呼ばれるアスリートであり、井上は紛れもなく『怪物』と呼ぶべき存在なのではないか。」と書かせてもらったが、その自分ですら予想していたのは井上の判定勝利。世界王座を通算27度防衛しダウンを一度も喫していない王者から、2Rで4度、しかも全て違うパンチでダウンを奪ってのKOなど、予想できた人間が果たしていたのだろうか?
 KO後に実況席の香川照之が半ば錯乱したような興奮状態を見せていたが、おそらく日本中のボクシングファンが同じ感覚に襲われていたはず。我々はボクシングの歴史の新しい1ページが開く瞬間を見たのだ、と思わずにはいられなかった。
 減量苦から解放された井上が今後もこのパフォーマンスを発揮し続けるとしたら、勝てる相手がいるとは思えない。それこそロマゴンがスーパーフライまで上げるのを待つしかなくなってくるのでは。やはり「怪物」は人智の及ばぬことをやってのけるから「怪物」なのだ、ということを嫌というほど思い知らされた。

 明日の試合のハードルが上がっちゃうよなあ。人気ブログランキングへ
[PR]
Commented by ユウツギ at 2014-12-31 00:49 x
いや〜、井上尚弥ヤバいっすねw!!!強すぎました。井上が強いのは解ってはいましたが、まさか僕のそれがまだまだ過少評価だったとはw今までは、さすがにナルバエスは早いんじゃないか、とか、ロマゴンと闘うレベルではさすがにまだまだないよな、とか思っていたんですが、それが全て覆りました!井上尚弥vsロマゴン!この黄金カードに期待が高まります!もし、互いに怪物のままこのカードが決まったら、重要な意味を含んでいます。それは、このカードならば、本来軽視されがちなこの軽量級において、全世界が認めるという事です。とりあえず、井上には、消化試合なしでもう統一戦でもやって頂きたいと思います!
Commented by みゆパパ at 2014-12-31 11:07 x
井上の勝ちが決まった瞬間、ヌゲイラさんの言葉が頭に浮かんでいましたよ。
まさに常識を覆す怪物ぶりでした。

本当にロマゴンとの対戦が楽しみになってきました。
Commented by nugueira at 2015-01-01 13:55
>ユウツギ様、みゆパパ様
 もう井上に対しては「早すぎる」という言葉は禁句ですね。ロマゴンもすぐにスーパーフライへ上げることはないでしょうが、もう井岡はどうでもいいので早く井上戦を見たいです。
by nugueira | 2014-12-30 23:43 | ボクシング | Comments(3)