反り立つ壁に撃沈。


by nugueira
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ロマゴン強し。日本ボクシング、またも世界の壁に屈する。

 録画予約を忘れるという大失態を犯してしまったWBC世界フライ級タイトルマッチ、八重樫東vsローマン・ゴンザレスの映像をようやく見たので感想を。

 1R、距離を取って様子見の八重樫だが、ラウンド後半に鋭い左ジャブを2発、3発と入れていく。終盤にロープ際に詰められロマゴンのボディをもらう場面はあったが、動きは悪くない感じ。
 2Rに入った途端、ロマゴンが一気にギアを上げて攻勢を仕掛けてくる。角度のバリエーションをつけながら連打を入れるロマゴン得意のパターンだが、八重樫はここで下がらず打ち合いに応戦してみせる。すると3Rは序盤から八重樫が先手を取り続け、打ち合いでロマゴンを押していくまさかの展開。しかしラウンド終盤に距離の詰まったところでロマゴンの左フックが入り、八重樫痛恨のダウン。
 しかし八重樫はこの後もひるむことなくロマゴンとの打ち合いに応じ、手数の上では決してひけをとらない好勝負を演じてみせる。決して自棄になっての打ち合いではなく、コンパクトに上下を打ち分けているのが実に上手い。だがこの展開になると回転力とキレを併せ持つロマゴンに分があるか。
 案の定というべきか、6Rに入った途端に八重樫の手数がガクッと減り、下がる場面が目立ち始める。依然としてノンストップで上下左右の連打を繰り出しいつもの勝ちパターンにはめていくロマゴンに対し、八重樫は根性は見せるが一発狙いの展開に追い込まれてしまう。
 8R、ロマゴンは試合を決めに来たか、序盤から距離を詰めての猛攻。ダメージの蓄積でフラフラの八重樫だが、ダウンすることなく立ち続け、ロマゴンの攻撃が止んだ瞬間には反撃する粘りも見せる。
 しかし続く9R、ロマゴンは攻撃の手を緩めることなく、なおも猛攻。決して大振りではないコンパクトなパンチを入れ続け、最後は顔面に左右の連打を叩き込んだところで八重樫が力尽きるようにダウン。世界屈指の強豪を相手に迎えての大一番は、KO負けによる王座陥落という結果に終わった。

 感想としてはまず何よりも「ロマゴン強い」の一言。八重樫がフットワークでロマゴンの距離を外し続ければ・・・という展開を期待していたが、そんな試合運びを許してくれる余地すらなかった。打ち合いの展開になっても際のディフェンス勘の良さは相変わらずで、両目が腫れ上がっていく八重樫に対しきれいな顔のままのロマゴン、という対比にこの選手のハイレベルなバランスの良さが集約されていたと思う。

 続いて八重樫について。「善戦」という言葉を使って褒めるのは負ける前提だったと認めることになるので決して言いたくないし、今回の敗戦は「西岡vsドネアに続き、日本ボクシングが世界の高き壁の前に屈した」という文脈で捉えるべきだと思う。最初にそう断ったうえで、ただ一言。感動した。
 結果としては完敗だし、序盤から打ち合いの展開を強いられたのはやはりロマゴンのペースに呑み込まれた、という見方にならざるを得ない。それでも3Rにはその打ち合いの展開から「あわや」という場面を作ってみせたし、乱打戦の中でも丁寧なボクシングを忘れなかった辺りは八重樫の真骨頂だろう。試合結果を知ったうえで映像を見ていたが、8Rにボロボロになりながらも立ち続ける八重樫の姿には涙を押さえることができなかった。結果を知らずにこの試合を見ていたら、絶対号泣していたと思う。

 繰り返しになるが、今回の敗戦を善戦と捉えてしまうのは八重樫に対しても失礼で、日本ボクシングにとって痛い一敗であることは変わらない。それでも、防衛回数を重ねる安易なマッチメイクを避け、同じ階級で一番強い相手と戦うというシンプルかつ困難な選択をしたこと自体が賞賛に値するのも間違いない。どれだけ高く険しくても、まずは壁にぶつかり続けるしかない。それを超えた先に、新しい地平が開けてくるはずだ。

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Commented by ユウツギ at 2014-09-13 11:44 x
いやほんとそうなんですよ。西岡vsドネアと同様、プライドとか男気とかを無慈悲に粉砕するくらいロマゴンが強すぎるんですよ。ちなみに僕は、大の将棋ファンでもあるのですが、西岡と八重樫の大一番は、将棋電王戦で、並々ならぬ覚悟で臨んだプロ棋士が、冷徹なCPUに惨敗する姿に似ているなと思ったりしました。(余談ですが、将棋の煽りVは今、佐藤大輔氏が製作しており、格闘技と同様、毎回素晴らしい出来です)

それにしても、西岡にしても、八重樫にしても、強豪を選んだ日本人世界王者って、ピンチになると逆に前に出るんですね。感動しました。最後に、ロマゴンは基本的に打たれない選手ですが、今回、八重樫のいいパンチを稀に食らっても首が揺れてなくて平然としていました。仮にロマゴンが打たれ強さまで備えていたら、まさに最強だなと思いました。
Commented by nugueira at 2014-09-13 19:32
>ユウツギ様
 西岡も八重樫も「前に出る」というより「出させられている」面があると思います。そういう状況にはめ込んでしまうのがドネアやロマゴンの強さなんでしょうね。
 私は将棋は見ないのですが電王戦だけは大好きで、毎回煽りVはチェックしています。佐藤慎一 vs ponanza は煽りVで泣きました。
Commented by みゆパパ at 2014-09-13 22:35 x
思いっきりはき出したかったのに、ヌゲイラさんほとんど言っちゃうんだもんなぁ。ズルイ!w

善戦したとか、感動した、とか、八重樫選手はそんなこと言ってもらってもきっと嬉しくもなんともないんでしょうね。
それくらい八重樫選手は本気で勝つつもりで試合してましたよ。

序盤を終えた時点で、足を使って捌くのは無理と八重樫選手がセコンドに通達し、打ち合いに出ると決めたそうです。
ここにも試合を諦めることなく、勝つ道を模索していたことが伺えるのではないでしょうか。

本当に皮肉な話ですが、常にこの法則は当てはまってしまいますね。
歴史に残る名勝負は敗者が作る。

再起の道を選択した八重樫選手。
大橋会長は、Lフライに下げての3階級もあると話していましたが、
一ファンの勝手な思いですが、フライに留まりロマゴンとの再戦まで辿り着いてもらいたい。

余談ですが、ロマゴンの強さにはゴロフキンと同じ部分があるように感じてしまいます。
あれだけグイグイ前に出てくるのに、相手のパンチを綺麗にはもらわない体捌き、あれだけの強打なのに相手の隙間を狙って上下左右打ち分けられる器用さ、等々。
両者が負ける姿を想像することができません。
Commented by まつば at 2014-09-14 21:51 x
今考えると、ロマゴンにとってモチベーションが上がらないのではないかと思われた、フライ級でのノンタイトルマッチ数試合は彼にとって重要なプロセスだったように思えますね。フライ級でのコンディション作りや試合感覚の維持etc.

ロマゴンはしっかり準備していたんですね。
Commented by ユウツギ at 2014-09-15 10:00 x
西岡利晃もそうでしたが、効かされる状態で、残り時間僅かの時にロマゴンの攻めが止まると八重樫はチャンスとばかりに打っていきましたからね!普通、ラッキーとか思ってダメージの回復&凌ぎに徹するのに。みゆパパさんも仰るように、本当に勝ちにいってましたね八重樫選手は。

佐藤vsポナのPVは、泣いた人が多いですよね。特に、対局後に見るとまた泣けます。「米長邦雄が選んだ男」「その棋士は救世主か犠牲者か」僕が泣いたのは、三浦vs GPSと、森下vsツツカナで、熱くなるのは、竜王戦 渡辺vs森内、名人戦 森内vs羽生と、それぞれ第一回から三回までの電王戦開催決定PVですね。余談ですが、格闘技DREAMのテーマは、PRIDEと比較して良いと思えなかったんですが、電王戦に使用されてから良い曲だと気がつきました。
Commented by nugueira at 2014-09-15 13:20
>みゆパパ様
 八重樫が模索した「勝つ道」が結局はロマゴンの土俵だったわけで、この辺が頂点に君臨する選手の強さなんでしょうね。ロマゴンもゴロフキンもパンチ力が凄いんでしょうが、そのパンチ力に頼らず技術の裏付けがあってKOを重ねてる点が共通してますね。

>まつば様
 強すぎて敬遠されたことが結果的にチューンナップのいい準備期間になってましたね。井岡と比較すると非常に対照的です。

>ユウツギ様
 「後に続く者に受け継ぐべき魂がある。それが将棋に育てられた者の宿命」とかしびれますよねえ。『Let me Entertain you』は私も電王戦PVで改めて好きになりました。
Commented by ユウツギ at 2014-09-21 15:41 x
今晩、フジで八重樫vsロマゴンが再放送しますよ。

アリ・ライミが、打倒ロマゴンに名乗りを上げてるみたいです。
Commented by nugueira at 2014-09-21 21:15
>ユウツギ様
 再放送、是非ともチェックしておきます。
Commented by なちょ at 2014-10-26 04:10 x
西岡のヘタレボクシングと同じにしたら駄目ですよ。
それに日本人の試合でずっと言ってますが相手の土俵にのったら勝てるわけありません。勝ちからは遠ざかります。
ロマゴンは一流の中の一流の選手、打ち合いに行ったら負ける可能性が増えるだけです、そのためのソーサ戦のアウトボクシングだったはず。メイウェザーも打ち合ったらマイダナに負けてました、相手の土俵で勝てるほど、ボクシングの一流どころは甘くありません。
前に出たとか、打ち合ったとかで感動するなら別ですが、勝つなら相手の土俵に乗ったら駄目です。
Commented by nugueira at 2014-10-31 20:27
>なちょ様
 八重樫も土俵に乗るつもりはなかったと思うんですが、そこで土俵に引きずり込んでしまうのがロマゴン、というかトップ中のトップの強さなんですよね。
Commented by ユウツギ at 2014-12-21 23:42 x
あ、説明不足ですみません。僕がいい曲だと思ったdreamのテーマは、これです。
https://m.youtube.com/watch?v=IMsciHUgHK0
第三回電王戦のカード&会場決定PVに使用されていて、凄くカッコよかったです。
Commented by nugueira at 2014-12-28 07:45
>ユウツギ様
 「あべのハルカス・天空将棋」のやつですね。来年の電王戦のPVが今から楽しみです。
by nugueira | 2014-09-12 23:55 | ボクシング | Comments(12)