反り立つ壁に撃沈。


by nugueira

Krush.41観戦記② 爆腕、未だ死なず。奇跡の復活の夜。

板橋寛×-○大月晴明(判定)
 これまで生観戦した大月の試合で最も印象に残っているのが2005年の小林聡戦。このブログを開設するよりも前の話で、あれからもう9年以上が過ぎた。テーマ曲も取り巻きのマスクマンも、当時と全く同じままでタイトルマッチのリングへと上がる大月。9年という歳月の残酷さはよく理解しているし、現に戦前の予想でも板橋勝利と書かせてもらった。それでもやっぱり、いざこの瞬間を迎えてみると大月を応援せずにはいられない。そんな複雑な心持ちで試合開始のゴングを聞く。だがその後に待っていたのは、中途半端な感傷が吹っ飛ぶまさかの展開だった。

 いつもながらのすり足でのフットワークから、飛び込んで左右のフックを振るっていく大月。1月の試合と比べても動きは良さそう・・・と思っているうちに大月の左フックがヒットし板橋がうずくまるようにダウン!いきなり大月がリードを奪う展開に、見ているこちらの心拍数が跳ね上がる。このまま一気に決めてしまいたかった大月だが、追撃を入れながらもダウンは奪えず1Rが終了。
 長丁場になると不安が残る大月に対し、板橋は2R序盤から前に出て反撃に転じる。しかしロープ際での打ち合いから大月がまたも左フックを打ち抜き、板橋2度目のダウン!この瞬間の興奮をどう表現したらいいのか!ただひたすら、我を忘れて絶叫し続けていた。
 だが板橋はここから驚異的なタフネスぶりを見せ、すぐさま反撃。一方の大月はやはりスタミナが続かないか、2R後半からは一方的に攻められる展開になる。
 3Rも板橋は反撃の手を緩めず、大月はロープに詰められパンチとヒザをもらい続ける。客席の「大月」コールと「板橋」コールが交錯する熱狂状態の中、大月はふらふらになりながらも最後まで立ち続け試合終了のゴング。板橋の反撃を耐えた大月が40歳にしてベルトを奪取。

 こんなことが本当に起きるのか、と試合が終わった瞬間も信じられない、まさに奇跡の一戦。久しぶりにキックボクシングの試合で泣かせてもらった。
 前述のとおり大月の全盛期からあまりに長い時間が経ったが、だから今の大月が勝てない、というのは外野の勝手かつ失礼な思い込みでしかなかった。歳を取るのは格好悪いことでもなければ、弱くなるということでもない。この日の大月は最高に格好良くて、勇気をもらえた。
 大月は試合後のマイクで「これからは激戦を勝ち抜いてきた若い選手と戦います。若い強い選手にKO負けしてリングを去るのが夢なので、若い強い選手、早く挑戦してください」と語って見せた。戦いはリング上にしかなく、選手の墓標を立てるのは観客ではない。爆腕は自らの死に場所を求め、またリングへと上がる。

瀧谷渉太○-×戸邊隆馬(判定)
 1Rは瀧谷が素早い出入りから左ミドル・前蹴りを入れていき全局面で戸邊を圧倒。ミドルが当たった次の瞬間にはもう別の場所にいる感じで、やはり安定感が違う。
 2Rには戸邊のパンチが瀧谷を捉える場面が増えたものの、ラウンド終盤に瀧谷がパンチから跳びヒザで攻め込み、戸邊のまぶたをカット。しっかりペースを握り返す。3Rは粘る戸邊が一進一退の攻防を見せ判定では一者がドローをつけるが、終始安定して攻め続けた瀧谷が戸邊を返り討ちにし初防衛に成功。
 えらい簡単な観戦記になってしまい申し訳ないが、やはり一つ前の試合でここまでテンションが上がり切った後にトリを務めるのは瀧谷にとっても可哀想だった。この辺りが試合順を組む難しいところか。

 今回の興業は本戦全て判定決着だったものの、大月の試合でチケット代は回収しておつりが来た、と断言できる内容。本当にいいものを見させてもらった。
[PR]
Commented by gsp at 2014-05-15 19:03 x
いつでも感動を与えてくれるのは親父世代なんですよねえ。
アーツやハントや格闘技ではないですが、スキーの葛西さんや陸上の朝原さん。
こうして見ると年を取るのも決して悪いことではないですね。
Commented by nugueira at 2014-05-15 23:53
>gsp様
 自分も完全におっさんの年齢になったせいか、こういう場面に本当に弱くなりました。大月、最高でした。
by nugueira | 2014-05-14 22:56 | Krush | Comments(2)