反り立つ壁に撃沈。


by nugueira

アンデウソン敗れる。「世紀のボーンヘッド」か、「必然の敗北」か。

 UFC162、あまりに衝撃的だったメインの感想を何よりも先に。

アンデウソン・シウバ×-○クリス・ワイドマン(2R KO)
 開始と同時にタックルに行くワイドマン。アンデウソンはがぶるような体勢にはなるものの、そのまま担ぎ上げるようにワイドマンがテイクダウン。上を取ったワイドマンはパウンドで攻勢。さらに蹴り上げを狙うアンデウソンの足をつかむと足関節を狙っていくが、ここはアンデウソンが引き抜いてスタンドへ戻る。
 再開後のアンデウソンはガードを下げ、自らケージを背負うおなじみのスタイル。ワイドマンのパンチが何度か当たるものの、ヘッドスリップで勢いを殺しているのかダメージを負った様子はなく、アンデウソンはさらにワイドマンを挑発。後半はアンデウソンが自分のペースに引き込んだ形だが、目立ったクリーンヒットは入れられず1Rが終了。
 2Rも引き続きノーガードでワイドマンを挑発するアンデウソン。ワイドマンは一度はタックルに行くもののアンデウソンに切られ、完全にパンチ主体の攻めになっていく。
 いつもほどカウンターが入っていないとはいえ、ワイドマンにタックルを出させなくした時点でアンデウソンの試合になったか・・・と思った瞬間、ワイドマンの左がアンデウソンを捉える。これまでの挑発とは明らかに違う動きでよろめくアンデウソンにワイドマンが追撃の左右のパンチ。仰向けにダウンしたアンデウソンにパウンドを入れたところでレフェリーがストップ。2R1分18秒、あまりに唐突に、あまりにあっけなくアンデウソンは敗れ、6年9か月に及ぶ長期政権に終止符が打たれた。

 まさに「歴史が動いた瞬間」となった一戦だが、見終わった後に残ったのはものすごい虚脱感。アンデウソンの負け方があまりに釈然とせず、「政権交代」の高揚感とは程遠い試合内容だったことが一因なのは間違いない。
 ただ、実況陣をはじめとして「油断」「ボーンヘッド」という感想が飛び交うフィニッシュシーンだったが、これまではそういうクレイジーな試合運びを見せ、そのうえで鮮やかなKO勝ちをやってのけていたのがアンデウソンではなかったか。これまでの相手とは距離感が違うワイドマンの長いリーチ、ほんのわずかな反射神経の衰え、モチベーションの低下と慢心・・・といった様々な要素が絡んで今回のKOが生まれたはずであり、その意味では「必然の敗北」だったのではないかとも思う。それこそ「油断しただけ」「次は勝てる」というのはヒョードルがヴェウドゥムに一本負けを喫したときに聞こえてきた感想ではなかったか。

 試合後のインタビューで「契約があるし試合はするが、もうベルトのためには戦わない」と発言したアンデウソン。ダナはかねてからアンデウソンが敗れた場合のダイレクトリマッチを公言していたし、今後のアンデウソンが安易なスーパーファイト路線に切り替えられるかどうかは分からない。ボクシングの数多の例が示すように、ここまで偉大な結果を残した王者の進路は本人の一存では決まらないだろう。
 ただ、「もうベルトのためには戦わない」と話すアンデウソンにはある種の解放感が見てとれた。今回の敗北を「自滅」と評する声もあるが、むしろ低下するモチベーションと、そんな中でベルトを保持し続ける重圧とに折り合いをつけるための「自害」だったのではないか・・・というあらぬ想像すらわいてくる。
 MMAの歴史に名を残す絶対王者が敗れたのは目の前の挑戦者以上に、自分の心に巣食う孤独だった。あまりに情緒的な見方かもしれないが、この日のアンデウソンの試合からはどうしてもそんな様子が感じられてしまい、それが見終わった後の虚脱感につながってしまうのだ。

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Commented by pretty侍 at 2013-07-07 23:43 x
正に衝撃でしたね。
自分でワイドマン勝利予想をしていたくせに驚いて声を上げてしまいました。

モチベーションの低下は有るでしょうね。
最近はロイ・ジョーンズjrと闘いたいと言ってる以外は特にやる気のある発言も見られないので…
さて、どうしたものか。
Commented by みゆパパ at 2013-07-08 09:47 x
冗談でなく、クソ暑かったため短パンでむき出しになっていた、自分の太ももを平手で連打しながら大声出してました。

それこそ星の数ほどの分析が噴出し、どこの情報サイトでもコメント欄が凄いことになってますよね。

私も自分なりの分析はありますが、それは横にどけておき、
毎度憎たらしく思っていたアンデウソンを失神KOで葬ってくれたワイドマンに感謝感激です。

試合後のコメントも優秀でしたけど、ワイドマンにはこのままベビーフェイスでいってほしいなぁ。
Commented by スラッカー at 2013-07-08 15:03 x
>ワイドマンの左がアンデウソンを捉える。これまでの挑発とは明らかに違う動きでよろめく

自分はこれは効いてないと思いますね
ただくらってる事は間違いないんで悔しさの裏返しであーいうパフォーマンスをしたのかと
結果的にそれが直接の敗因になってしまいましたが
今回のノーガードもタックル対策も兼ねてるんでしょうが
挑発は作戦というより悔しさ(慢心)の裏返しに見えました

ただそうなったのは最後のコンビネーションが届いてる事も示すように
ワイドマンの打撃(ボクシング)スキルは今までの選手とは違うというのが大きいかと

ただ自分も?ヒョードルと同じようにここから巻き返しは厳しいかと思います
Commented by おっさん at 2013-07-08 23:28 x
まあ今回の事はアンデウソン目線で見てしまいがちだが、ワイドマンがアンデウソンと並び立つレベルの怪物であるだと思った。

アンデウソンの凄さというのはつまるところディフェンス力であって、それを打ち破ったというのが凄い。
1Rのパウンドをとってみてもああいう貰い方は今までしてなかった訳で。
ミドル級離れしたリーチがあり、パワーと正確性、技術とセンスを併せ持つ。
レスリング力はソネン級と言われており、柔術はそこらの黒帯以上と言われている。
打撃はアンデウソンのノーガードに打撃で立ち向かって打ち勝つレベル。
末恐ろしい。

アンデウソンは思惑通りノーガードと挑発でスタンド戦に持ち込めた訳だが、ワイドマンの間合いを読み切れないまま負けてしまった印象。
あのまま打撃戦を続けられたとして、アンデウソンがワイドマンの打撃を見切る事が果たして出来たかどうかだな。
まあ言っちゃあなんだが、セラがGSPをKOしたりする事もあるんだから、長くやってりゃパンチが当たっちゃう事もあるかなと思ったりもする。

モチベーションの問題はあるとは思う。
偏見かも知れないが、すぐ神だなんだと言ってるのは、自発的モチベーションが少ないからじゃないかな。
Commented by マラビージャ at 2013-07-10 18:38 x
フィニッシュシーンを見直したんですけど、左→右→右(裏拳)→左ってなってて、右(裏拳)挟んでるから、最後アンデウソンはワイドマンから見て左にスウェイして死角からカウンターのように左もらってますね。狙ってたなら見事です。

アンデウソンが2月に再戦したいとコメントしたみたいですが、是非ぜひ観たいですね。
Commented by nugueira at 2013-07-14 14:53
>コメントをいただいた皆様
 コメントありがとうございます。レスが遅くなり恐縮です。
 アンデウソン目線で見るか、ワイドマン目線で見るかで感想は違ってくるかと思いますが、自分としてはこれだけ「語り甲斐のある負け方」ができるのもまたアンデウソンの凄さかな、と思ったりもしました。
 12月の再戦が決定しましたが、今回の敗戦でアンデウソンの張りつめていた糸が切れている可能性も高いのではないかと考えています。
by nugueira | 2013-07-07 22:28 | UFC | Comments(6)